小売業界で導入されているアプリは、「顧客向けアプリ」と「社内業務向けアプリ」がありますが、どちらのタイプも導入が増えています。増えている理由としてはスマホの普及があげられます。年齢や性別を問わず多くの人がスマホを所持していることから、スマホを使った販売促進や業務の効率化を狙ってアプリを導入しています。
また、顧客向けのアプリが増えている理由としては、オンラインショッピングの普及が影響しています。特に20〜30代の若年層のアプリ利用率が高く、SNSの普及により欲しいものはすぐにハッシュタグで検索し購入する傾向も高いため、若年層へのアプローチとして無視できないツールになっています。
その他、コロナ禍で顧客が出歩いて買い物をする機会が減り、今まで利用していなかった人もオンラインショップで買い物をするようになりました。
それに合わせてショップをアプリ化し、ユーザーの利便性や顧客満足度のアップを図る企業が増えています。
小売業におけるアプリ導入のメリットは主に以下の4点です。
お客様に接触する機会を増やし積極的に情報提供することで、販売促進を図ることができます。具体的には次のような機能の利用です。
アプリのプッシュ通知機能を使うことで、スマホ端末上に情報を表示させることができます。クーポン配布やセールなどお得な情報を配信することで、オンラインショップへの誘導も可能です。このようなお客様への接触は今までメールで行っていましたが、見逃されるリスクがありました。スマホのプッシュ通知はメルマガよりもリアクション率が高い傾向があります。
また、常にスマホにアイコンが表示されているため、目につきやすく隙間時間で情報に触れてもらえる可能性も高まります。
ポイントカードをアプリ化してお客様のファン化を図る小売企業も増えています。
従来のカードタイプのポイントカードは、来店時のカード忘れや紛失、劣化などのリスクがありました。アプリならカード忘れや紛失のリスクはなく、カードタイプよりも利便性が高いです。
最近はキャッシュレス決済利用者が増え、財布を持ち歩かない人もいます。そのため、カードタイプのポイントカードを持ち運びにくいと考える人もいます。
社内業務向けアプリを使うことで、業務の負担を減らすことも可能です。例えば次のようなことが考えられます。
店舗が複数ある企業では、在庫管理や販売情報の管理、それ以外の情報共有にアプリを使っている例もあります。また、点検や衛生管理などの手順がフロー化されている業務では、アプリのチェックリストに沿って進めることで業務フローを徹底し全店舗でのミスやトラブル防止に繋がります。
アプリを活用することで顧客のデータを収集するだけでなく、社内のデータも収集・管理することが可能です。収集したい情報に合わせて最適なアプリを作成しましょう。
ユーザーの購入履歴からのデータ収集はマーケティングの戦略を考える際に重要です。アプリに登録されている個人情報を基に属性などを分析し、クーポンやセール情報をプッシュ通知で知らせることもできます。
また、現場の業務データや従業員が聞いた顧客からの意見や改善点などを収集することで、現場の実情の把握や運用改善の取り組みに役立てることができます。
小売業界でどのようにアプリが導入されているのか、事例を確認してみましょう。まずは集客を目的としたアプリの導入事例です。
スタンプ機能やクーポン配信によって、既存顧客の再来店を狙うことも可能です。
ブックオフコーポレーション株式会社では30周年記念アプリとして集客を狙うほか、スタンプカードをアナログからデジタルに切り替えることを目的としてアプリを導入しました。
アプリの機能は以下の通りです。
アプリが来店の要因になっているかの判断は難しいものの、導入2ヶ月時点のダウンロード数や最高ランク到達者の数は想定より多く、アプリが顧客に受け入れられていることがわかります。
お客様が利用するアプリなので操作に関する問い合わせもありますが、アプリ内に操作方法について表記することで問い合わせを減らすこともできました。
キャッシュレス化を図る方法としてプリペイドカードのアプリ化があります。プリペイドカードとは、前払い式のキャッシュカードで、ユーザーは事前にお金をチャージして利用します。アプリ化することでカードを持ち歩く必要がなく、お店に行って入金する手間も省けます。さらに、チャージや利用の履歴を確認できる上、ポイントが貯まる場合も多いです。
スターバックスやドトールではプリペイドカードアプリを導入しています。それぞれのアプリの支払い以外の特徴を紹介します。
スターバックスジャパン公式モバイルアプリ
ロイヤリティプログラムとはポイントのようなシステムで、支払額に応じて飲み物などと交換できるチケットが発行されます。アプリで支払うと自動的にロイヤリティが付与されるシステムです。
また、「Mobile Order & Pay」機能では、アプリから店舗を指定し注文、支払いまで完結するシステムです。指定した時間に店舗に行けば、レジに並ばずに商品を受け取ることができます。
ドトール バリューカード アプリ
会員登録時にお気に入り店舗を登録すると、セールの情報などが配信されます。また、地域限定デザインカードの配布は「小売業界でのアプリ導入のメリット」で紹介した「お客様のファン化」に繋がり出張や観光の際にドトールを利用してもらいやすいという特徴があります。
業務効率化を図るためにアプリを導入した事例を紹介します。
コンタクトレンズ、メガネ、補聴器の販売を行う株式会社銀座メガネでは、本部から店舗への情報共有は効率化されていたものの、店舗から本部への連絡はメールを利用していました。そのため、情報の検索が困難で、過去のデータを確認しにくいというのが課題でした。特に店舗視察報告では決まったフォーマットもなかったため、チェック内容や基準が人によって異なっている点も改善したいと考えていました。
導入した「視察報告アプリ」では、報告のフォーマットと基準を統一し、報告の精度を高めることができました。また、報告されたデータは一元管理され、ノウハウの共有や過去のデータを元にした店舗戦略の立案が可能になりました。
業務課題やアプリ導入効果について詳しくはこちらのページをご確認ください。
その他、店舗視察報告に必要な情報管理や実際のアプリ画面についてはこちらをご覧ください。
賞味期限間近などの理由で店頭販売が難しいペットフードを低コストで販売している寄付型ショッピングサイトの社会貢献ペット用品店cocoroを運営している株式会社こころでは、倉庫管理業務を紙やエクセルを使って行っており、商品の出荷荷までに膨大な手間と時間がかかっていました。
そこで、入荷から出荷までの作業情報を一括で管理できる倉庫作業管理アプリを3日で内製し、導入しました。入荷検品、入庫、ピッキング、梱包、棚卸の現場の作業報告がアプリで管理できるようになり、入荷から出荷までの時間が5日間かかっていたものを2〜3日に短縮できました。また、倉庫にはPCが1台しかなく、情報入力のための順番待ちが発生していましたが、アプリから入力できるようになり作業時間の短縮が実現しました。
業務課題やアプリ導入効果について詳しくはこちらのページをご確認ください。
創業150年を超える百貨店の株式会社松屋では、食品表示シールの記載ミス削減や履歴管理のデータ化を課題としていました。また、衛生管理者が売場に赴かないと記載内容の確認や修正が行えない点も改善したいと考えていました。
そこで、食品衛生管理アプリを導入し、売場担当者が食品表示シールを撮影・共有すると、衛生管理者に通知が届きどこからでも内容をチェックできるようにしました。記載ミスがあればアプリ上で修正指示ができるため、業務全体のスピードアップに繋がりました。
この事例についての詳細はこちらのページからご確認ください。
小売業界がアプリを導入する場合は次のようなことに注意してください。
アプリを導入する際は、目的を明確にします。課題の改善や目標の収益額などを設定し、それを達成するためのツールとしてアプリを導入します。
目的は具体的に設定しましょう。数字を設定すると目に見える目標となるので社内全体で取り組みやすいでしょう。
小売業界でのアプリは開発費の他に運用コストがかかります。例えば以下のような費用です。
アプリ導入で注意したいのがOSアップデートに対応するためのコストです。OSは毎年のように更新されているため、定期的に費用が発生することを意識してください。また、アプリの規模によってはサーバーを運用する必要があります。
アプリの開発や運用に関する費用について詳しくはこちらのページよりご確認ください。
アプリは「使いやすい」ことが重要です。例えばデザインが良いものでも、画面展開があまりに遅いと使いにくいアプリになってしまいます。
開発時に現場のユーザー目線で設計し、活用しやすいアプリを作成するよう心がけましょう。
小売業界ではスマホやオンラインショップの普及に合わせ、アプリを導入する企業が増えています。小売業界でのアプリには「顧客向け」と「社内向け」に業務効率化を図るもの、その両方を期待できるものがあります。
アプリを導入する際は、目的を明確にしユーザー目線の使いやすいアプリを開発することが大切です。また、アプリ運用コストを事前に試算し、収益に繋げることができるのか検討することも重要です。
実際の様々な事例を踏まえて、自社にはどのような機能が必要なのか?どのように活用ができるか?を考えてみましょう。
小売業界での成功事例やアプリ活用方法をより詳しく知りたい方はこちらのページをご確認ください。