当ブログでは2020年から様々なノーコードツールを取り上げてきました。いまやノーコードは目新しいものではなく、多くの企業がDX実現のために採用するツールとして定着しつつあります。「ノーコードでも使ってみようか?」ではなく、「どのノーコードツール使う?」という時代になったといえるでしょう。
今回特集するのはGlideです。以前紹介したBubbleやAdaloと並び、海外製のツールではかなり有名で定番なものになります。今回もその特徴や、他のツールとの比較など検証していきたいと思います。
まずはGlideの概要を簡潔に紹介します。
Glideで作成できるアプリは、いわゆる「Glide Apps」と呼ばれるモバイル向けのWebアプリと、最近追加された新機能「Glide Pages」と呼ばれるデスクトップ向けのWebアプリの2種類がありますが、本記事ではGlide Appsの方を紹介していきます。
アプリ作成まではわずか3ステップとなっています。
多くのノーコードツールと同様、クラウドサービスなので、アプリ作成にあたって必要なものはインターネットとブラウザだけです。サーバー等の機器を用意する必要はありません。
Glideで作成できるアプリは、Webアプリでありながらもネイティブアプリの機能を併せ持つ「PWA(プログレッシブウェブアプリ)」です。
※PWAおよびネイティブアプリについての詳細はこちらの記事をご覧ください。
個人用途のアプリから、社内業務アプリ(toB)、一般公開アプリ(toC)まで対応しているほか、ZapierやStripe、Shopifyなど外部サービスと連携し、ECの構築やサブスクリプションの実装もできます。
よく比較されることが多いBubbleとAdaloとの違いを簡単にまとめました。
難易度 | PWA | ネイティブアプリ | レスポンシブデザイン(※) | スプレッドシートからアプリ生成 | |
---|---|---|---|---|---|
Glide | 易しい | ○ | × | × | ○ |
Adalo | 易しい | ○ | ○ | × | × |
Bubble | やや難 | × | × | ○ | × |
※PCでもスマホでも、画面幅に応じて見た目が調節されること
他の2つと比較したとき、Glideの最も大きな違いとしては、やはりスプレッドシートからアプリが生成できる、ということでしょう。
BubbleはPCにもスマホにも対応したレスポンシブデザインのWebアプリを作成できるが、GlideはGlide AppsとGlide Pagesで別々になります。
Glideは無料で使うことができますが、無料だと扱えるデータ量が少なく、ユーザーやアクセス権管理もできません。ビジネス目的のアプリを運用する場合、有料プランにしないと機能的に不足するでしょう。
Glideの料金体系は以下の通りとなっています。
プラン | Personal App | Pro App | Private App | Enterprise App |
---|---|---|---|---|
料金 | Free | $32 | $40 | 応相談 |
詳しくはこちらのページを参照ください。
社内で業務アプリを作成し権限を付けて運用しようとした場合、40$のプランからが基本となりそうです。日本円だと約4590円(2022/2/1現在のレート)になります。
まずはアカウントを作成しますが、このときスプレッドシートを連携できるように、GoogleアカウントでサインアップしGoogleドライブ上のファイルへのアクセスを許可するようにします。
Apps – New Projectをクリックし、プロジェクト名を入力、Glide Appを選択します。
プロジェクトというネーミングに多少違和感がありますが、これがそのままアプリの名称になります。
Select a SourceでGoogle Sheetsを選択すると、ログインしているGoogleアカウントのシートが一覧で出てくるので、アプリにしたいシートを選びます。
今回使用したのは、機器の故障を管理する簡易的なスプレッドシートです。データは数件入れてあります。(カラムは機器番号、日付、受付者、ステータス、進捗状況、修理内容など)
シートを選択してボタンを押してから、ものの10秒もしないうちに、アプリが誕生しました。自動的に故障機器リストが表示されており、外観としてはほぼ仕上がっています。
しかしこの状態だとデータが閲覧できるだけで、追加や編集ができないので、各画面で”Add Form”や”Edit Form”にチェックを入れ、データを追加、編集できるようにしましょう。これでもう立派なアプリとなりました。
右上のPublishを押し、続いてShareします。Publicだと全世界からアクセスできてしまうため、ここはPrivate Sign-inでTeam Members Onlyにしましょう。(本来これは有料プランの機能ですが、同時に1ユーザーのアクセスだけならば、無料版でも使うことができます)
以上で完成です。スプレッドシートに適当にデータを入れてGlideにアップしただけで、所要時間は5分もかからずアプリができあがりました。
公開されたアプリを使用するには、スマホからアプリのリンクURLにアクセスするか、またはQRコードを読み込みます。最初はブラウザで開きますが、「ホーム画面に追加」(iOSの場合)することによって、独立したアプリのように使うこともできます。
スプレッドシートのシート名も項目もそのままアプリに表示されるので、どこがどこに対応してアプリになっているのか把握することが容易でした。基本的には、Googleスプレッドシートの各シートがGlideアプリの各タブに対応し、一覧画面は行の見出し、アプリの詳細をタップすると行の全容が表示される仕組みです。ある程度慣れると「このスプレッドシートからどんなアプリが作られるか」分かってくるので、逆算してスプレッドシートを作りこめるようになります。
Glideには様々な種類のテンプレートが数多く用意されています。テンプレートを元にアプリを作る手順は簡単です。
好きなテンプレートを選択し、COPY THIS TEMPLATE を押して追加します。コピーが終わると、自分のプロジェクトとして利用可能になります。
今回は「Spare Parts Inventory Management」という部品の在庫管理のテンプレートを使ってみましたが、円グラフで統計が取られていたり、各データテーブルにリレーションが設定されていたりするなど、なかなか作りこまれている印象でした。
テンプレートをそのまま使ってもよいですが、Glideのより細かい設定や機能の勉強にも使えます。スプレッドシートが自分のGoogleドライブに追加されるので、データとアプリの構造理解にも役立つほか、それを元に新しいアプリを組み直すこともできるでしょう。
最後に、Glideとモバイルアプリ作成ツールのPlatio(プラティオ)を比べてみます。まずは大きな部分の違いをまとめました。
作成できるアプリの種類 | スプレッドシートからアプリを作成 | 対応言語 | オフライン対応 | |
---|---|---|---|---|
Platio | ネイティブアプリ | × | 日本語 | ○ |
Glide | PWA | ○ | 英語 | × |
Platioはネイティブアプリなのでオフライン入力にも対応しているほか、ポップアップ通知などスマホの特徴を利用した機能が使えます。
(ユーザー単位でセキュアにサインインできるプランで比較)
価格 | ユーザー数 | 作成できるアプリ数 | |
---|---|---|---|
Platio | 20,000円/月~ | 10(追加課金可) | 200 |
Glide | 約4,590円/月~ | 20 | 1 |
Glideはアプリごとに上記費用がかかる一方、Platioは1ライセンスで200までアプリを作成することができます。
GlideもPlatioも、どちらも豊富な数のテンプレートが揃っていますが、以下のような違いがあります。
テンプレートの性質 | 価格 | 作成者 | |
---|---|---|---|
Platio | 点検報告や日報など、企業向け、現場業務を効率化するテンプレートが多い | 無料 | メーカー |
Glide | 個人の家計簿からECまで、幅広い分野、ジャンル | 無料、有料 | サードパーティー製もあり |
Platio | IoT機器、BIツール、ERP、SFAなど(Platio Connect) |
Glide | Googleスプレッドシート、Zapier、GASなど、機能拡張プラグインも |
Glide、Platio、どちらも導入の敷居は低く、操作も簡単でスピーディーにアプリを完成でき、学習コストもかからないため、目的に応じて使い分けるのがよさそうでしょう。
今回はノーコードツールGlideを特集しました。今まで紹介してきたツールの中だと、簡単で直感的な操作でシンプルかつセンスの良いデザインのアプリが仕上がる、という点でAdaloと近い印象です。反面、Bubbleほど自由度が高くはないといえます。一番の特長であるスプレッドシートからのアプリ生成は、何の変哲もない台帳が本当に5分でアプリになったので驚きました。脱Excelの救世主になるかもしれませんので、企業の業務効率化にも試してみる価値は大いにありそうです。無料トライアルや無償版の提供を各社行っていますので、気になる製品は一度試してみることをオススメします。
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