
運送業における点呼は、運転者の状態や車両の安全を確認し、事故を未然に防ぐために欠かせない業務です。しかし、紙による運用では手間がかかり、記録の不備や属人化といった問題が現場に残されています。最近では、不適切な点呼の実施が社会的に問題視され、点呼の厳格な実施と記録の透明性が一層求められるようになりました。本記事では、点呼業務における課題や遠隔点呼について解説し、点呼業務にモバイルアプリを活用するメリットをご紹介します。
運送事業者は、運行の前後に運転者と運行管理者が面談し、安全に運転できる状態かどうかを確認する義務(※参照1)があります。具体的には、次の項目をチェックし、記録簿に残します。
点呼は交通事故を防ぐための重要な工程であり、記録は一定期間の保存が義務付けられています。記載漏れや不正記録が発覚すれば、法令違反として行政処分の対象となる恐れがあります。
実際、2024年には日本郵便株式会社において不適切な点呼がされ、国土交通省から一般貨物自動車運送事業における許可取消の行政処分(※参照2)を受けました。
つまり点呼の実施体制は、安全運行の土台であると同時に、企業としての信頼を左右する要素と言えるでしょう。
これまで点呼業務は、重大事故の発生や飲酒運転の根絶、健康起因による事故防止などの理由で強化されてきました。背景には、2012年の関越道高速ツアーバス事故や2016年の軽井沢スキーバス事故などの運行管理不備による重大事故、業務車両による飲酒事故の継続的発生や疾病、過労に起因する事故の増加があります。このような事態を受け政府は、アルコール検知器の導入・使用の義務化、酒気帯びだけでなく疲労や健康状態の確認を明文化、点呼記録の作成・保存を徹底するなど、制度を段階的に強化してきました。
結果として、点呼業務は単なる形式的な業務ではなく、安全運行を確保する実効的な仕組みとして位置づけられ、その重要性を増しています。さらに現在では、道路交通法の施行規則改正により特定条件の白ナンバー事業者にもアルコールチェック義務化が拡大され、より広く事業者に運転者管理の責任が求められる制度へと発展してきました。
前述した通り、点呼業務は安全な運行に欠かせない重要業務ですが、現場ではその運用に多くの負担がかかっています。以下に、時間的制約や人員不足、記録管理の難しさなど、点呼業務で直面しやすい課題をまとめました。
点呼では、運転者一人ひとりに対して酒気帯びの有無、体調や睡眠の状況、車両点検の結果などを確認し、内容を記録簿に記入する必要があります。
所要時間は1回あたりおよそ5分ですが、運転者が多い営業所では多くの時間を要することになり、運行管理者にとって負担となっています。
特に出発前は、点呼に時間を割きすぎるとスケジュールに遅れが生じかねません。一方で、「確認を省略する」「記録を後回しにする」と、法令違反や重大事故につながります。
そのため現場では、限られた時間のなかで安全確認と正確な記録を両立するための、点呼業務の効率化が課題となります。
運行管理者は、事業用自動車の安全な運行を確保するために必要な管理業務を行う責任者であり、選任が義務付けられています。また、営業所ごとの車両台数に応じて一定以上の人数を配置しなくてはなりません。
運行管理者が不足すると、点呼の実施や記録に漏れや不備が生じるケースが増加します。特に複数の運転者が同時刻に出庫・帰庫する場面では、限られた人員では十分に対応できず、点呼が形骸化される可能性もあるでしょう。また、深夜や早朝の時間帯にも対応が求められる中、常時対応が難しくなることで、健康状態や疲労の兆候を見逃す可能性も高まります。
点呼記録を紙で管理している場合は、記入漏れや確認ミスが発生しても見落とされるリスクが高まります。
また、業務負担の大きさから、「実施したことにする」「後からまとめて記入する」といった運用が定着するリスクも考えられます。このような状況が続けば、記録の信頼性が失われ、トラブルの拡大にもつながりかねません。
本来の目的である安全確認が形骸化しないよう、記録方法と運用の見直しが求められています。
点呼業務では、すべての運転者に対して1日2回の記録を行い、1年間保管することが義務付けられています。紙で運用している現場ではファイリングに手間がかかるうえに、過去の記録をすぐに探し出せないといった非効率さが課題として残ります。
加えて、2024年4月1日以降は、一般貸切旅客自動車運送事業者において点呼記録簿の保存期間が3年間に延長されました。記録内容は改ざんが困難な形での保存、つまり動画やデータによる保管が定められています。
この動きに伴い、車両点検の結果や業務日報など、関連する書類についてもペーパーレス化を進める必要が生じています。
制度改正の詳細については以下の記事で解説しています。併せてご覧ください。
点呼業務の課題を解消する方法として注目されているのが、携行性の高いスマホで使用できるモバイルアプリの活用です。スマホであれば、普段から使い慣れている運転者も多く、直感的な操作で簡単に利用できます。また、持ち運びしやすいため時間、場所を問わずにリアルタイムな情報共有も可能です。ここからは、点呼業務にモバイルアプリを取り入れるべき理由をご紹介します。
新たなツールや業務フローを採用すると、現場が慣れるまでに時間を要する場合があります。運転手や運行管理者に対して、操作方法を教育する負担も避けられません。
その点、モバイルアプリは操作が直感的で、特別な研修を行わなくてもすぐに活用できる点が強みです。画面に沿って入力するだけで操作が完了するため、機械に不慣れなスタッフでも扱いやすくなっています。
アプリは社用スマホはもちろん、従業員の個人端末にインストールして利用できる場合もあり、導入しやすいという点も支持されています。
モバイルアプリを活用することで、営業所内だけでなく、離れた拠点ともデータを共有できるため、運行管理における情報伝達のタイムラグや抜け漏れといった課題を解消しやすくなります。
さらに、スマートフォン本体に備わっているカメラ機能を活用することで、画像・動画のデータも保存が可能です。
誰が・いつ・どのように点呼を行ったのかを記録できるため、不正な記載やなりすましを防止し、記録の信頼性を高める効果が期待されます。
遠隔点呼を行う手段としては、専用のカメラやモニター、システムを設置する方法もあります。しかし、新たな機材の購入費用や、月額利用料や利用人数に応じたアカウント料金が重なれば、運用コストも高額になりかねません。
その点、スマートフォンを活用するモバイルアプリであれば、既存の端末を活用できるため、新たな機器の購入や設置工事は不要です。導入時の費用を最小限に抑えられるほか、月額利用料も比較的低価格で設定されているケースが多く、企業規模や利用人数を問わず導入しやすい方法といえるでしょう。
点呼業務をデジタル化するなら、自社で柔軟にアプリを作成できる「Platio(プラティオ)」がおすすめです。クリック&ドロップといった簡単な操作で誰でも扱える設計となっており、運輸・物流業界で導入が進んでいます。
ここでは、Platioの主な特長をご紹介します。
Platioでは、あらかじめ用意されたテンプレートを選び、必要な項目を編集するだけでアプリが完成します。プログラミングの知識や技術が不要なノーコードで簡単に作成できるため、導入までの手間もかかりません。
例えば、点呼業務に関連するテンプレートとしては、以下のようなものがあります。
テンプレートは100種類以上用意されており、点呼業務以外も簡単にアプリ化できるため、企業全体の業務改善もスムーズに進みます。
点呼アプリでは、氏名や健康状態などのプライバシー情報を取り扱う場面が避けられません。紙からデジタルへ移行する際には、情報漏洩や外部からの不正アクセスを懸念する声もあります。
Platioでは、こうした不安に配慮し、プランに応じて様々なセキュリティ機能を提供しています。
Platioの料金プランは3種類あり、どのプランを選んでも初期費用・導入費用は発生しません。例えばスタンダードプランは月額2万円台と手頃な価格帯ながら、1契約あたり最大100ユーザー、200個までアプリを作成できます。
点呼管理にとどまらず、日報や設備点検などほかの業務にも展開できるため、アプリ作成のコスト削減にもつながります。
ここでは、Platioでモバイルアプリを作成し、業務効率化に成功した事例をご紹介します。
大阪を中心に送迎バスの運行管理業務を請け負っている株式会社エキスパート 様は、業務日報、車両点検、健康管理をそれぞれ紙で管理していました。従業員は直行直帰型であるため、授受を郵送で行う必要があり毎月の送付作業に手間がかかっていたり、事務作業を圧迫していたりするなどの課題を抱えていました。
そこで、Platioを導入し、タイムリーにその日の業務を報告できる「業務日報」、運送の安全を確保するために重要な「車両点検」と「健康管理」のPlatioアプリを1日で作成。ペーパーレス化を実現したことで、運送の安全確保、報告用紙や郵送代削減、事務作業の大幅な工数削減など、多くの成果を挙げることができました。

エキスパート様の詳細な事例はこちら
点呼業務は、運送業における安全確保と企業の信頼維持に欠かせない業務です。とはいえ、紙による運用では人的負担が大きく、記録ミスや不正の温床にもなりかねません。
Platioを活用すれば、点呼アプリをはじめ、車両点検や業務日報など、現場のさまざまな業務に対応したアプリをノーコードですぐに作成でき、導入コストも抑えられます。アプリの作成から現場での利用も可能な無料トライアルも用意されているので、この機会にお試ししてみてはいかがでしょうか。