2024年(令和6年)4月1日より、貸切バスにおける安全対策を一段と強化するため、旅客自動車運送事業運輸規則の制度が改正となりました。新制度では、点呼の様子を撮影した動画および点呼記録を電子ファイルで保存することや、アルコールチェック時に写真を撮影して電子ファイルで保存することなどが義務化され、管理業務のデジタル化が必要になります。
一方で、これまで紙やExcelを使用して点呼記録やアルコールチェックの記録を管理していた場合、モバイルアプリを活用することによって、制度改正に伴うデジタル化への対応とともに、業務の効率化を促進させる機会にもなるでしょう。
本記事では、今回の改正で義務化された点と、義務を効率的に遵守するための解決案をご紹介します。安全管理の質を向上させつつ、管理業務の負担を大幅に軽減するために、ぜひ最後までお読みください。
今回の制度改正により、点呼やアルコールチェックなどの記録・保存方法が変更となりました。現在のルールと異なる点や、新たに義務化された項目を解説していきます。
2023年(令和5年)10月、国土交通省が旅客自動車運送事業運輸規則(昭和31年運輸省令第44号)等の制度改正を行いました。特に注意したい変更点は「点呼」と「アルコールチェック」の記録・保存方法です。
点呼では確認の様子を録音・録画し、記録を90日間保持することが義務付けられました。アルコール検査もその様子を写真で記録し、90日間保存する必要があります。
施行は2024年(令和6年)4月1日からとなりますが、3月31日までに新規登録を受けた事業用自動車に係る運行記録計による記録は、2025年(令和7年)3月31日までアナログ式運行記録計による記録でも可能です。
制度改正の契機となったのは、2022(令和4)年10月に静岡県で発生した貸切バスの横転事故です。この事故により、女性1名が亡くなり、28名が重軽傷を負いました。
このような悲惨な事故を二度と繰り返さないため、国土交通省は事故の原因を徹底的に分析し、貸切バス業界全体の安全性を根本から見直すことにしました。
そして2023年(令和5年)10月10日に旅客自動車運送事業運輸規則の改正を公布し、2024年(令和6年)4月1日から施行することを決定しました。
制度改正に伴い、新たにアルコールチェック時の写真撮影や点呼記録の動画撮影などが義務となりました。現在のルールから変更となった点は以下の5点です。
それぞれの項目について詳しく解説します。
これまで運送引受書や点呼記録など輸送に関わる書類の保存期間は1年間でしたが、3年間に延長されました。さらに電磁的記録(デジタルデータ)として保存することが義務となりました。
改正前は点呼記録を紙や電磁的方法で管理するというルールでしたが、改正後は点呼の様子を録画・録音すること(動画撮影)が義務になりました。
なお、映像から点呼実施者と運転手双方が判別できる画質・画角にする必要があります。運転手が遠方にいる場合は電話点呼の録音で構いません。その電磁的記録は撮影日が分かるようなファイル名で整理し、90日間保存する義務があります。
運転手がアルコール検知器で酒気帯びの有無を確認する様子を写真撮影(画像記録)しなければなりません。検査中の運転手の顔写真を撮影し、画像は90日間保存、ファイル名や保存日などで撮影日が分かるようにし、電磁的方法で3年間保存します。
なお、点呼記録で録画をしていて、アルコールチェック時の運転者が容易に識別できる場合は改めて撮影する必要はありません。
改正前は運行データの記録をアナログ式・デジタル式どちらでも可とされてきましたが、2024年(令和6年)4月からはデジタル式運行記録計(デジタコ)の使用が必須となりました。また、デジタル式運行記録計を使用する場合は、その電磁的記録を3年間保管することも義務化となります。
ただし、施行開始前の2024年(令和6年)3月31日以前に新規登録を受けた、事業用自動車に係る運行記録計による記録については、2025年(令和7年)3月31日までアナログ式運行記録計による記録でも良いこととされています。
一般貸切旅客自動車運送事業者は、インターネット等で安全取組の公表が義務付けられています。これまでは「運転者、運行管理者、整備管理者それぞれに対する教育及び研修の直近事業年度における年間実施回数」の項目が挙げられていましたが、今回の改正により、初任運転者向け実技指導の公表が求められることになります。
記録・保存が必要な事項は貨物自動車運送事業輸送安全規則で定められています。特に点呼とアルコールチェックに関する項目は数が多いため、細心の注意を払う必要があります。
点呼(乗務前・乗務後・中間点呼)では、運転者の酒気帯びの有無や疲労感など以下の項目を記録します。
アルコールチェック記録簿に記録しなければならない項目は以下の通りです。
今回の制度改正に伴い新たに義務付けられた、点呼記録の動画撮影やアルコールチェックの写真撮影といった作業は、従来の管理方法では大きな手間と時間を要します。
この課題に対応する方法のひとつとして、「モバイルアプリ」が注目されています。モバイルアプリは「誰でも使いやすい」「デジタルデータとして保存される」「改ざんしにくい」などのメリットがあります。
ここからは、制度改正の要件に対応するためにモバイルアプリ導入を推奨する理由について解説します。
モバイルアプリの導入により、運用負担を軽減しつつ、制度に遵守した運用が可能になります。3つの大きなメリットを確認しましょう。
モバイルアプリの操作は直感的に理解しやすく、簡単に操作することができます。運転手や管理者のスマートフォンに配布するだけで、点呼やアルコールチェックなどの作業を現場で迅速に完了させることが可能です。従来のように紙の報告書を作成したり、事務所に戻ってからデータを入力したりといった煩雑な作業が不要になります。
新制度で注意しなければならないのは「監査時にデータを提出できないと無効になってしまう場合がある」という点です。紙ベースの管理では検索・参照が難しく、保存したはずなのに見つけられないといったトラブルが発生するかもしれません。
モバイルアプリを利用すれば、入力データや画像・動画はクラウド上に自動保存され、監査時に必要な記録を素早く見つけ出し、提出することができます。
また、クラウド上に保存されたデータは場所を選ばずアクセスできるため、管理者はオフィス外からでもリアルタイムに点呼記録やアルコールチェックの状況を確認することも可能です。
点呼やアルコールチェックを含む記録はExcelなどで保管してもよいとされています。しかし、後から修正可能な方法ではデータ保護のため、さらにPDFや写真にするなどの作業が発生します。
一方、モバイルアプリでは報告後の編集を禁止する設定を施すことで、データの改ざんを防ぎ、記録の信頼性を高めることが可能です。これにより、保存した記録の加工といった作業をしなくても、データのセキュリティを強化することができます。
制度対応のためにモバイルアプリの活用を検討していても、「専門知識がないと難しいのでは?」「高額な費用がかかるのでは?」と不安を抱える方も多いでしょう。
そこでおすすめしたいのが、プログラミングの専門知識がなくても直感的な操作でアプリ作成が可能な「ノーコードツール」です。
ここからは、自社の業務にモバイルアプリを導入する際に、ノーコードツールをおすすめする理由をご紹介します。
モバイルアプリ開発を外部の業者に依頼する場合、アプリの種類や要件によっても異なりますが、簡単な検索アプリでも3か月、複雑なアプリとなれば1年以上の開発期間を要することがあります。
一方で、ノーコードツールであれば、あらかじめ完成された部品を組み立てるだけでアプリを作成することができるため、自社の従業員でも簡単にアプリを作成し、スピーディーに業務への導入が可能です。
モバイルアプリの作成から導入まで自社だけで完結することができるため、外部のアプリ制作会社へ依頼する開発費用を削減することができます。また、前述の通りアプリを導入してからも、新しい項目の追加や運用に合わせた修正などを自社で簡単に行うことができるため、アプリの維持にかかる費用を削減することができます。
「Platio(プラティオ)」は自社の業務に合ったモバイルアプリを誰でも簡単に作成できるノーコードツールです。業務に合った100種類以上のテンプレートが用意されており、その中から選ぶだけで現場の従業員でも簡単に自社専用のモバイルアプリを作成することができます。
例えば、Platioには以下のようなテンプレートが用意されています。
こちらのテンプレートは以下の制度にも対応可能です。
Platioはカスタマイズも簡単なため、上記のテンプレートをベースにして、点呼記録アプリやその他の管理アプリも短時間で作成可能です。
また、初期費用0円、月額は20,000円から利用できるため、スモールスタートで試すことができます。アプリ作成から活用まで実際に体験できる無料トライアルも用意されていますので、まずは無料体験をお試しください。
2024年(令和6年)4月からの制度改正は、各種書類のデジタル保存の義務化や点呼記録の動画撮影など、貸切バス事業者にとっては大きな業務負担となります。しかし、業務用モバイルアプリを活用することで現場負担を減らしつつ、既存ルールの変更点や新たに義務化された事項に対応することができます。制度改正への対応に不安を抱えていたり悩んでいる事業者の方は、ぜひモバイルアプリの導入をご検討ください。
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