道路・橋・トンネルなどの社会インフラは今後、老朽化が一気に加速すると言われています。社会インフラの適切な維持管理のためには、メンテナンスが欠かせません。デジタル庁が担うデジタル臨時行政調査会では、「目視」や「実地監査」といったアナログ業務を見直すべく、「アナログ規制」4000条項の一括見直しプラン策定や2023年からの法改正を目指しています。持続可能なインフラメンテナンスの実現に向けて、インフラ点検の取組を充実させることや深化させていくことが今後の課題と言えるでしょう。
インフラ点検とは、道路・橋・トンネル・河川施設などの社会インフラを点検・診断・評価・劣化予測などを行うことによってメンテナンスしていくことを指します。ここでは、インフラ点検の現状や今後の課題について解説していきます。
道路・橋・トンネル・河川施設などのインフラは、1960~1970年代の高度経済成長期に建設されているものが多く、建設から50年以上経過したものが増え続けています。立地環境や維持管理によっては、50年に満たないものでも危険性が出てくるものもあるので、インフラ点検は欠かせません。老朽化したものを放置しておくと、コンクリート片などによる第三者災害を招くことになり大変危険です。
そこで、国土交通省は2014年から高さ2m以上の道路橋やトンネルを5年に1回の頻度で近接目視による定期点検を市町村に義務付けています。
老朽化したインフラは、放置しておくと大きな事故につながることもあるので、定期的なインフラ点検が必要です。しかし、インフラ点検を行うにあたって、さまざまな問題を抱えているのが現状です。
インフラ点検を行う際は、現地に足を運び目視で行います。点検のために足場を組んだりゴンドラを準備したりすることも多く、橋などは転落などの事故リスクが高い作業のため、専門家などの人材も必要となります。しかし、労働人口が減少傾向にある近年では、必要な人材が集まらず、人手不足に悩まされている現場も多くあります。
そのためインフラ業界では、国土交通省を中心に、点検業務にドローンをはじめとする新技術の導入を進める方向になってきています。
また、インフラの安全を維持するためには、熟練の経験やメンテナンス技術が必要です。特に劣化が表に出にくい場合は判断が難しいため、経験値の高い技術者が常に不足し深刻な問題になっています。そのため、少人数でもインフラ点検を維持できる仕組み作りや技術伝承などの人材育成も急務になっています。
インフラ点検を維持していくには莫大な費用がかかります。しかし、多くの自治体では、予算不足のためインフラ点検の遅れへの課題も顕在化しています。
インフラ点検を目視で行うためには、人件費はもちろんのこと、足場やロープワークなどの準備・設置、点検車・高度作業車の手配や運搬などの費用が必要となります。
費用を抑えるためにも、今後は新技術の積極的な活用や、アナログな業務のデジタル化を通して効率化を図り、持続可能なインフラメンテナンスの実現を目指すことが課題と言えるでしょう。
インフラの老朽化が大きな社会問題となっています。大きな事故も相次いでいることから、インフラ点検においては、早急な対策が求められています。こちらでは、現在行われている具体的な取り組みを3つご紹介します。
インフラ長寿命化計画とは、2014年に国土交通省が取りまとめた行動計画です。インフラのライフサイクルを延長するための行動計画が盛り込まれています。2021年6月には、第2次インフラ長寿命化計画も策定されました。ライフサイクルの延長に留まらず、将来にわたってインフラを維持するための継続的な取り組みがまとめられています。
今までは専門家が現地に足を運んで点検を行うという方法が取られていましたが、現在はドローンでの遠隔操作が行われるようになりました。点検のための準備や足場や機材などの設置が不要で、点検車・高度作業車も必要ありません。ドローンの操作はリモートで行うことができ、高所の点検でも、安全かつ安価に行えます。ただし、空港周辺や住宅地など、ドローンが飛行できないエリアには対応できません。また、ドローン飛行については事前に「国土交通省」許可をとり、飛行する地域の「自治体」に確認が必要になります。
AI (人工知能) による画像診断も注目されています。AIによる画像診断の精度は高く、正確性が求められる医療現場においても専門の画像診断医にも劣らないほどの精度と言われています。専門家が膨大な数の画像から劣化の有無を確認することは、人員不足、予算、時間などあらゆる面で困難を極めますが、ドローンの遠隔操作とAIの画像診断を組み合わせることによって素早く省コストでの点検が可能です。
先にもご紹介したとおり、ドローンを活用することによって、大幅な人員・費用の削減が可能になります。特に高所の場合、人による点検は天候や足場の状況などによって事故リスクが大変高く、危険です。また、従来の目視点検で発生する死角となっていた箇所も点検できるようになります。
インフラ点検にドローンを利用することは、安全に安価で素早く点検が行えるのがメリットと言えるでしょう。
ドローンが飛ばせない地域もあり、まだまだ人による点検が必要な場所も多数あります。国土交通省によると、建設後50年以上経過するインフラの割合は以下(表1)のようになっており、多くのインフラ点検を効率良く進めていかなければならないことがわかります。ドローンが使えない場所では、人が画像を撮影することになりますが、今までのように事務所に戻って画像を取り込みファイルに保存、必要であればメールで送信というような手順では、多くの時間と手間がかかってしまいます。
そこで、点検報告業務を効率化するために、点検現場で報告が完結できる「モバイルアプリ」の活用がおすすめです。
アプリを使ってリアルタイムで情報共有したり、点検業務や報告業務など、今までアナログで行っていた業務をデジタル化することも、インフラ点検の効率化のために大きなポイントとなってくるでしょう。
インフラ | 総数 | 2023年 | 2033年 |
---|---|---|---|
道路橋 | 約73万橋 | 約39% | 約63% |
トンネル | 約1万1千本 | 約27% | 約42% |
河川管理施設 (水門など) |
約1万施設 | 約42% | 約62% |
下水道管 | 約47万Km | 約8% | 約21% |
港湾岸壁 | 約5千施設 | 約32% | 約58% |
人の手によるインフラ点検は、点検後に報告書を作成するなど多くのアナログ作業が必要となります。将来的には、膨大な数のインフラ点検を効率的に行っていく必要があり、そのためにも点検業務や報告業務のアナログ化を解消することも重要です。
モバイルアプリを活用すれば、その場で何かあった際にすぐに入力できるだけではなく、スマートフォンから直接「写真」や「動画」を添付し視覚的で分かりやすい情報共有が可能になります。さらに位置情報を自動で取得できるため、紙の地図を元に緯度・経度データを起こすなどの事務作業も不要になります。
また、場合によっては、トンネルや地下などネットが届かない点検現場もありますが、モバイルアプリであれば、オフラインでも操作できるためその場で報告を完結できる場面が多いのも特徴です。
その他、いつもの数値との誤差が合った場合に、自動で管理者や他のユーザーにメールやプッシュ通知を送信できる機能もあるので、異変に気づきやすいといったメリットもあります。モバイルアプリを活用することによって、データも蓄積されるので、分析や今後の計画も立てやすくなります。
今後はアナログ化していた業務をいかにデジタル化し、効率良くインフラ点検を行っていくかが重要となるでしょう。
ここでは、業務用モバイルアプリ作成ツール Platio(プラティオ)を活用して、業務効率化に成功した企業の事例を見てみましょう。
電気通信設備の構築や管理、保守を担うNTT東日本 茨城支店では、ガスや電気など、他のインフラ企業が地面を掘り起こして工事を行う際は、各社依頼のもと立ち会い、管路の埋設位置などを説明しスムーズな工事に協力しています。しかし、長年立ち会いを担当してきたベテランたちが高齢化しており、若手社員へのノウハウ継承が急務に。そこで、 Platioで現場のノウハウをその場で報告できるアプリを2日で作成し、効率的かつ信頼性の高い情報を蓄積。年間1000時間の業務を削減し、ノウハウ蓄積による若手育成を効率的に推進しています。
導入事例の詳細はこちらからご確認ください。
設備・土木関連の事業を広く展開する東備建設では、工事に使用する重機の点検記録を用紙に記入していました。記入済みの用紙は月に1度回収して状況の確認を行っていました。しかし、回収までに時間がかかり状況の確認が難しいことや、記入漏れがあった場合に対応できないことが課題となっていました。そこで、Platioを導入し「重機点検アプリ」を作成したことで、業務アプリで簡単に点検報告ができ、点検状況をリアルタイムに確認できるようになりました。また、点検や管理業務の効率化を実現しました。
詳しくはこちらをご覧ください。
熊本県小国町では、過去に災害が発生した際、被災状況を用紙に書き込んで災害対策本部で共有していました。しかし、文字のみでは状況を正確に把握することが難しいこと、現場と役場を往復しなければならない点が課題でした。そこで、役場の担当者がノーコードツール「Platio」で「被災状況報告アプリ」を1日で作成しました。これにより、災害時発生時は本部との情報共有を素早く行うことが可能となり、正確な状況を把握できるようになりました。
詳しくはこちらをご覧ください。
インフラ点検の現状と今後の課題について解説しました。今後、増え続けることが予測されるインフラ点検には、既に以下のような対策が実施されています。
しかし、点検作業だけを効率化しても、報告業務などがアナログのままでは、多くのインフラ点検を効率良く進めていくことができません。今までアナログなやり方だった非効率な業務をデジタル化していくことも今後は重要になっていきます。
インフラ点検・報告業務を効率的に行うには、業務アプリ作成ツール「Platio」の活用がおすすめです。Platioは月額2万円〜と低コストで導入できるうえに、プログラミングの知識がなくても現場の業務に合わせたアプリが短時間で作成・運用できます。
現場で使えるアプリ導入事例や現場のDX推進に向けて下記ページも参考にしてみてください。