現場やバックオフィスの管理者・担当者といった、非エンジニアでも簡単にアプリをDIYできるツールとして最近注目度急上昇の「ノーコード」。前回の記事では、今ノーコードが必要とされている背景や理由、ノーコードのメリットについて記載しました。今回は、実際にどのようなノーコードサービスが提供されていて、それぞれ何ができるのかをみていきましょう。
いま世界中で多くのノーコードサービスが存在しています。本記事ではそれらをタイプ別に整理したうえで、代表的なノーコードサービスの概要を紹介していきます。自社にフィットし業務改善を実現してくれそうなサービスを見つけてみてはいかがでしょうか?
さて、一口にノーコードといっても、種類ごとに実現できることや特徴が様々に分かれるのがポイントです。大きく分類すると、以下の4つに分けられるといえるでしょう。
また、その中でもさらに特定の機能や業種向けにターゲットを絞ったものもあり、サービスによって違いがあります。ノーコードを使って実現したいことを明確にし、目的にあった種類のサービスを選ぶことが重要です。
まずはCMS(コンテンツマネジメントシステム)といわれる、ノーコードでWEBサイト作成が可能なサービスから紹介していきましょう。
代表格であるWordPressは2003年にリリースされ、ブログやホームページを無料で作れるソフトです。それまではWEBサイトというと、HTMLやCSSというプログラミング言語によってコーディングしないと作れませんでした。しかしWordPressの登場によって、専門知識がない初心者でも簡単にWEBサイトの作成が可能になったのです。WordPressおよびCMSは世界中を席捲し、今やCMSによるホームページ制作が、HTMLやCSSよりも主流となっています。
ノーコードで簡単にWEBサイトを作成できるサービスとしては他にも、「WIX」、「ペライチ」、「WebFlow」などが有名です。また、専門分野に特化したサービスも登場してきており、ECサイトを作成できる「Shopify」や「Base」、採用サイトの「Basemiidas」などがあります。
続いては、業務アプリを作成できるサービスです。業務においても自分たちの手でアプリを作成し、デジタル化や業務改善を推し進めることができるため、多くのシーンで活用が見込めます。
自社の業務に合わせたWEBデータベース型のアプリを構築できるのが、kintoneやFileMakerといったツールです。主に、社内に散在する様々な情報を集約し、管理・共有する基盤(ポータル・グループウェア)として活用するのが一般的でしょう。プログラミング不要で、設定作業に近い感覚で、様々な情報を管理するアプリを作ることができます。
次に、業務用のモバイルアプリ作成ツールを紹介しましょう。WEBアプリと似ていますが、今や誰もが持っているスマホやタブレットといったモバイル端末に特化したインターフェースや機能を搭載し、オフラインでの利用も可能なことから昨今注目を浴びており、ITメガ企業の投資も進んでいます。
Platioは、社内で行っている様々な業務を効率化するためのモバイルアプリをノーコードで簡単に作成できるツールです。日次報告、設備管理、チェックリストなど100を超える豊富なテンプレートを使用できることで、ITの専門知識がない現場担当者でもアプリを迅速に作れるように工夫されています。WEBアプリと違って、オフラインで利用できるのも特長です。
Google、Amazonが最近リリースした「AppSheet」、「Amazon Honeycode」もPlatioに近いモバイルアプリ作成ツールといえます(ただし、これらはまだ日本語未対応)。これらのノーコードで業務アプリを作成できるツールの多くは、Excelなどのスプレッドシートをデータベース代わりに使用するので、スプレッドシートとの連携が得意です。アプリに記録されたデータの集計や分析を、使い慣れたスプレッドシートを使って出来るのも魅力といえるでしょう。
※AppSheetについては、こちらの記事で詳しく紹介していますのでご覧ください。
自社内で使う企業向けのアプリが「業務アプリ」なのに対し、企業がユーザーに提供するアプリを「コンシューマー向けアプリ」といいますが、そのノーコードサービスとして代表されるのが、「Yappli」や「GMOおみせアプリ」です。これらはモバイルで使える幅広いデザインのネイティブアプリをクラウド上で開発~運用することができ、ビジュアルやデザインに特化したアプリを作成できるのが特長です。
現在はアパレルや商業施設、飲食といった業界も、積極的にアプリを集客強化ツールとして活用する時代です。アプリでは店舗の情報発信のほか、顧客同士の連携、また、ポイントカード、クーポン配布など、オムニチャネルの実現を支援します。
最後に紹介するのは、業務の連携、自動化を支援するノーコードサービスです。ワークフローやRPAと呼ばれるものに近いといえるでしょう。これまで紹介したツールで作成したアプリを様々なシステムと簡単に連携することができます。
Asteria Warpは、既存のシステム、データベースやクラウドサービスと接続し、連携するサービスです。新旧のシステムのデータを連携、統合し、業務を自動化することによって、運用工数やミスを削減させることができます。アイコンのドラッグ&ドロップとプロパティの設定で作成するため、技術者だけではなく幅広い人が使うことができ、開発期間も大幅に短縮させることができます。
他にも、WEBサービスやIoTデバイス、スマホを連携させる「IFTTT」や、複数のWebアプリを連携し独自の自動化ワークフローを構築できる「Zapier」などが代表格のサービスです。
このように、一口にノーコードといっても、アプリを作れるサービスからアプリを連携させるサービスまで様々です。
ノーコードはプログラミング不要とはいえ、サービスによって要求される難易度レベルに違いがあるのも確かです。専門用語が出てくるような開発者向け、プロ向けのサービスもあれば、直観的で初心者でも使いやすく、現場の担当者がすぐに作れるような製品もあります。
複雑なことをしようとするとJavaScriptの知識が必要だったり、多少コードを書かなくてはいけなかったり、追加でカスタマイズ料金がかかったりすることもあるので、どこまで何をやりたいのかを明確にして製品を選ぶことが望ましいといえるでしょう。
たとえば業務アプリを作成できるノーコードサービスを例にすると、一番簡単なGoogleフォームに比べMicrosoft PowerAppsを使いこなすには、それなりのITスキルが必要になります。拡張性や実装できる機能は比べ物になりませんが、いざ導入してみても使いこなせず宝の持ち腐れになることもあり得ます。Platioはその2つの中間で、バランスが取れた製品といえます。
例:業務アプリ作成ノーコードサービスの使いやすさ比較
サービス名 | 使いやすさ | 特徴 |
---|---|---|
Googleフォーム | 〇 | 無料で誰でも簡単にアプリを作れるが、簡単なアンケートの作成などに限られる |
Platio | 〇 | 現場の担当者でも簡単にできる、かつ幅広い機能 |
Microsoft PowerApps | △ | 拡張性は高いがマニアックでITスキルが要求される |
ノーコードが脚光を浴びる現在、様々な用途別に多くのサービスが登場しています。本記事では代表的なものを取り上げてまいりましたが、もちろん紹介しきれなかったサービスも沢山あります。有名だからという理由で飛びつくのではなく、自社の目的にあったサービスを選ぶことが最も重要です。
また、使いやすさ、作りやすさという指標も大事です。現場の担当者が自らアプリを作るためには、現場の担当者でも使いこなせるレベルのサービスがよいと思います。無料でトライアルできる製品も多いので、実際に使ってみて最適なサービスを検討してみることをお奨めします。
本記事に関連し、ノーコードで業務アプリを作成できるツールを比較した資料や事例集も用意しておりますので、下記リンクから、ぜひご覧いただきたいと思います。