ISO22400とは、生産管理の評価指標を国際標準化したものです。業種や業態、企業ごとに異なるMES(製造実行システム)領域の評価指標の国際標準化を目的にしています。
日本やアメリカをはじめ、ドイツ、フランス、スペイン、スウェーデン、韓国、中国などの国々がこの取り組みに参画しています。
MESとは「Manufacturing Execution System」の頭文字を取ったもので、製造実行システムのことです。
製造業の生産現場において、人・モノ・時間といった限られた経営資源から、質の高い製品を効率よく製造することを目的に、工程の状態の把握や管理、作業者への指示や支援などを行う情報システムを意味しています。
ISO22400の指標は、「生産性」「品質」「能力」「環境」「在庫管理」「メンテナンス」の6つのカテゴリーで、合計34項目の「KPI(Key Performance Indicator=重要業績評価指標)」を定義しています。
分類 | KPI |
---|---|
生産性 | ・労働生産性 ・負荷度 ・生産量 ・負荷効率 ・利用効率 ・総合設備効率 ・正味設備効率 ・設備有効性 ・工程効率 |
品質 | ・品質率 ・段取率 ・設備保全利用率 ・工程利用率 ・直行率 ・廃棄度合 ・廃棄率 ・手直率 ・減衰率 |
環境 | ・環境エネルギー消費量 |
能力 | ・機械能力指数 ・クリティカル機械能力指数 ・工程能力指数 ・クリティカル工程能力指数 |
在庫管理 | ・在庫回転率 ・良品率 ・総合良品率 ・製品廃棄率 ・在庫輸送廃棄率 ・その他廃棄率 |
メンテナンス | ・設備負荷率 ・平均故障間隔 ・平均故障時間 ・平均復旧時間 ・改良保全率 |
それぞれのKPIごとに定義式と構成要素が定められており、生産設備や生産システムから取得可能な情報だけではなく、作業者のオーダー別の実作業時間など、自動で取得することが難しい生産情報も含まれます。
34項目のKPIの中でも、特に重要視されている「労働生産性」と「総合設備効率」の2つの評価指標についてご紹介します。
「労働生産性(Worker Efficiency)」とは、労働の効率性を測る指標で、労働者一人当たりもしくは一時間当たりに生産できる成果を数値化し、生産性を表したものです。
労働者一人当たりどれくらいの利益を得られたのかを数値で表すことが可能で、労働生産性の数値が高ければ高いほど、労働力が効率的に利用されていると判断することができます。
そもそも生産性とは、投入資源と産出の比率のことで、「生産性=産出÷投入」の計算式で算出することが可能です。労働生産性は、労働者数や時間当たりの労働量などを数値で表した「労働投入量」を用いて、労働者一人当たりの付加価値額や生産量を「労働生産性」として算出します。
労働生産性 = 成果(生産量や付加価値など)÷ 労働投入量(労働量や資源など)
労働生産性には、成果に対する付加価値を表す「付加価値労働生産性」と、成果に対する生産量や販売金額を表す「物的労働生産性」の2つの種類があります。
労働者一人当たりの粗利を表した付加価値労働生産性は、「付加価値労働生産性=付加価値額÷労働量」の計算式を用いて算出します。一方、労働者一人当たりの産出量や販売金額を表した物的労働生産性は、「物的労働生産性=生産量÷労働量」の計算式を用いて算出することが可能です。
「総合設備効率(Overall Equipment Effectiveness)」とは、生産管理での設備の効率や生産性を評価するための指標です。設備の稼働時間に対する付加価値の割合を表しており、稼働率や性能、品質により算出・決定されます。
総合設備効率は、下記の計算式を用いて算出します。
総合設備効率 = 時間稼働率 × 性能稼働率 × 良品率
予定した稼働時間に対する実際の稼働時間の割合で、「時間稼働率=稼働時間÷負荷時間」の計算式を用いて算出します。
生産時間に対する実際の生産数の割合を表す性能稼働率で、「性能稼働率=正味稼働率×速度稼働率」の計算式を用いて算出します。
生産量に対する良品の割合で、「良品率=良品数÷加工数量」の計算式を用いて算出します。
総合設備効率は、設備がどれだけ効率よく使用されているかを測定する指標で、設備の効率を阻害するロスも考慮して算出します。工場や生産ラインの実際の生産能力を反映するため、ISO22400の様々な指標の中でも特に重要な指標です。
ISO22400を導入して生産性指標を標準化すると、ベンチマーキングが可能になることが大きな特徴です。では、ISO22400を導入することによって、どのようなメリットがあるのでしょうか?
ISO22400の導入は、新規取引やM&Aの際に評価される項目になるメリットがあります。
欧州では、ISO22400の導入を取引条件に加えている大手メーカーもあります。大手製造業の傘下になった場合でも、ISO22400を導入していれば、新たに指標を標準化する手間がかかりません。
「工程」→「工場」→「通過拠点」→「企業」→「企業間」と横断して統一したものさしで評価ができると、現場の情報から経営情報まで統合的に可視化できるようになるため、今の社内状況を見直すことができます。
ISO22400を導入すると、同一設備や工程での現場の実力の客観的な評価だけではなく、異なる設備や工程についても、ボトルネックとなる課題の把握が可能です。
ISO22400を導入し、生産性指標を定義することで、制御機器やセンサーなどから、必要なデータを収集することができます。近頃では、あらかじめ総合設備効率を見る機能を備えた商品も多く見られるようになりました。評価指標や算出式を標準化できると、生産管理の見直しが測れるため目に見える形で業務改善を行うことができます。
ISO導入により、様々な現場のデータが必要になると、対応する従業員の負担が増えてしまいます。そこで、現場業務の負荷を軽減しながら効率的に運用する仕組みとして現場でも持ち運びやすいスマホで使える「業務アプリ」を活用する企業が増えています。
Platio(プラティオ)は、業務に合った100種類以上のテンプレートから選ぶだけで、誰でも簡単に業務アプリが作成できるモバイルアプリ作成ツールです。シンプルな操作性で現場に馴染みやすく、月額2万円からの低価格で現場の効率化を実現することができます。
今回は、Platioを活用して、効率的に現場データを収集し活用している事例をご紹介します。
産業廃棄物の中間処理を行う株式会社興徳クリーナー様では、「工場日常点検」や「暑さ指数管理」など毎日100項目以上の点検記録を紙で行っており手間がかかるうえ、紛失や破損のリスクがありました。
また、ファインリングの手間や蓄積したデータが役立てにくいなどの課題がありました。
そこで、Platioを導入し「工場日常点検アプリ」と「暑さ指数管理アプリ」を最短1時間で作成し運用を開始しました。
アプリ活用により、入力漏れ防止設定や自動計算によりミスや漏れのないデータが蓄積できるようになり、報告や情報管理業務の効率化を実現。
さらに、蓄積したデータによる分析や、ISO認証・行政の許認可に必要な現場データを効率的に収集できる”ハブ”としてアプリを活用しています。
事例の詳細は、こちらから。
ISO22400の導入には、新規取引やM&Aの際に評価されたり、工程を横断して社内状況を見直すことができるなどの多くのメリットがあります。
ただし、ISO22400を導入する際には、様々な現場のデータ取得が必要となるため、対応する従業員の負担が増える恐れがあります。現場業務の負荷を軽減しながら効率的に運用するなら、まずは「紙の報告」をデジタル化するところから始めていきましょう。その中でも、現場業務には携帯性に優れたスマホから簡単に報告できる「業務アプリ」の活用がおすすめです。
その他、製造業におけるDX推進のポイントについては、下記ページからご覧いただけますので、ぜひ参考にしてください。
製造業では、少子高齢化で人手不足が深刻化しているため、現場業務のデジタル化を推進し、業務を効率化することが急務となっています。本資料では、現場主導でデジタル化を推進する解決策として「ノーコード」の重要性と業務アプリのメリットについてご紹介します。